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私のハリスツイード。 -3-

先日、生地をカットしました、「私のハリスツイード」の仮縫いを行いました。
私自身の意思で着る、人生初めてと言ってもいいシングルブレステッドの上着なので、若干緊張しながらも、大いに楽しみにしておりました。
私の仕立て屋さん」N氏との入念な打ち合わせの結果、上着の仕様は、最もオーソドックスな二つ釦の上一つ掛けと致しました。
私自身の意見としては、生地の色柄が特長的なので、上着の仕様には奇を衒いたくなかったことがあり、また、N氏曰く、胸囲と胴囲の差が大きい私には、Vゾーンが狭過ぎず、オーソドックスな二つ釦の上一つ掛けが、上半身のシルエットを一番美しく仕立てられるのでは、ということでした。私に異存が無かったことは言うまでもありません。
ポケットは、まだ切ってありませんが、胸はウェルト・ポケット、脇は玉縁にフラット・フラップにする予定です。チェンジポケットは設けません。
そしてこのハリスツイード、ご覧のように三つ揃いのスーツなのです! 色柄から想像して、当然セパレーツ用のジャケットと想像していた方もおられるかと思いますが、私は、カジュアルやカントリー・ウェアには、日本ではジャケット仕様とされる少々大胆な色柄を、スーツにするのが好きなのです(笑)。

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背中から見た具合が、下の写真です。
N氏の仕立てる服は、上着の背中からウエスト、そして裾へのラインがとても自然で美しいのです。
肩から袖山は、ダークスーツの場合には、コンケーブでローブド・ショルダーにするのですが、この服は、全てナチュラルにして、袖山も盛り上げも潰しもしない予定です。

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下は、背中のアップの写真です。上襟が低く合っていないのは、後身頃との境目の確認用のもので、本番用のものでないからです。次の中縫いで、今回の仮縫いの具合によって芯材を選び、芯を作って確認となります。因みに、前身頃のラペルも同様に中縫いまでにハ刺しされます。
肩からウエストにかけて、とてもぴったりと自然にフィットしているのがおわかりになると思います。身体にピッタリとフィットしているように見えますが、これで、とても動きやすく楽なのです!
着手の身体にピッタリとした構築的にも見える外見で、柔らかく余裕があり動きやすいというのが、N氏の仕立てる服の最も大きな特長であり美点だと、私は思っています。

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正直に申し上げて、もう少しモサッとした野暮ったいシルエットになるかと思っていたのですが、私の想像を上回るカットにとても喜んでいます(笑)。仮縫いが済んだばかりだというのに、もう、中縫いが待ち遠しくてなりません。
そして、この服には、もう一つちょっと趣向を凝らしてあるのです。それはまた、次回の中縫いの報告にて・・・。
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「品」とはどういうものか。

品格という言葉があります。また、上品な人、下品な人、といった言い方があります。皆さんに、「お前自身は、上品な男なのか? 品格のある人間なのか?」と問われれば、残念ながら自信がありません(笑)。
ただ、自分の信ずる或る一点において、下品ではないと思っていますし、常にそれを意識して努力をしています。
その一点とは、一歩仕事場を離れたら、完全にプライベート・モードに切り替えるということです。

寛ぎや酒食の席で、相手の興味や感情に配慮せず、自分の仕事話など延々と話し続けたり、そうした場所を、自分の仕事の利益拡大の場所としか考えずに行動する人間は、最も下品な人種だと思っています。
また、年賀状や暑中見舞いなどの挨拶状に、自分の仕事の内容や実績、主義主張などばかりを細かい文字でびっしりと、それこそ保険屋さんの規約のように書いたりするのも、たいへん下品で失礼な行為だと思っています。
簡単に書かせて頂くと、私が下品な人間だと思う人は、「自分以外の人間と接する機会は販路拡張の場であると考える」人です。そういう人間にだけはなりたくないと思っています。

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ずっと以前、欧州で私がうかがった、或る楽団のパトロンをしておられる富豪の方のお話が、とても印象深く記憶に残っております。
「金は生きる上で不可欠の大切なものだ、だから私は、金がたくさんあればあらゆる意味で豊かな生活ができると思って懸命に努力した結果、現在の経済的成功を築いた。しかし、そうした人生を送って来て、今、私が言えることは、経済的なものは人間の品格のようなものとは相反するということだ。私は私の子供達に幸せになって欲しいと願うが、私のような人間になって欲しくはないと思う。そして彼らも、私を愛しも尊敬もせず、私という人間を必要としていない。彼らが必要としているのは、私でなく私の金だけなのだ。これでも昔、若くて貧しかった頃は、今より少しは品のある男だったんだよ。」
音楽がこの方を感傷的にしたのでしょうか、彼は東洋の一青年の前で目を真っ赤にして、そう話したのでした。演奏会にも、宴の席にも、この方はいつも一人でいらっしゃいました。奥様とはずっと昔に離婚されたそうですが、その彼に挨拶をする人はたくさんいるのですが、会話をされる方は全くといってよいほどいませんでした。

これは、極端な例かもしれません。しかし、今現在の日本は、そうしたものをたくさん内包していると思います。服装とは、自分の周囲の方達への思いやりが必要なものです、と、以前の頁に私は書かせて頂きました。自分だけがよければよい、自分がしたいから勝手にする、というのは「品」のある大人の行為だとは言い難いと思います。だとしたら、クールビズのノータイは本当に環境への配慮なのでしょうか? 誰が涼しいのでしょうか? 国母選手の服装や振る舞いは、何が問題だったのでしょうか? 私は、その答えがそこにあると思えるのです。

私のハリスツイード。 -2-

今年の一月に、このブログに書かせて頂きました「私のハリスツイード」が、いよいよ仕立てのために裁断されることになりました。勿論、裁断するのは、私の仕立て屋さんことN氏です。
ハリスツイードというと重く硬い生地であるイメージですが、"あの公爵さま"が晩年おめしになられた、ツイードでウエイトもある生地ながら、ツイードの質感はそのままに柔らかくしなやかな仕立て上がりを目指しまして、裁断・仕立ての前に、地のしをはじめとする生地の下準備に時間をかけました。

いよいよ裁断です、上着の前身頃のカットを撮影してみました。
まずは、型紙に沿って生地にチャコを入れます。

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型紙をご覧になって驚く方もいらっしゃると思いますが、今回、この生地で仕立てる上着はシングルブレステッドです。このブログで最初の記事に書かせて頂いたことですが(「シングルブレステッドのトラウマ。」参照)、私は、シングルの上着を着るのは高校以来、自分の意思で着るのは人生で初めてと言ってよいでしょう。ちなみに、N氏は一人一人のお客さんに対して全くオリジナルの型紙をおこします。店の基準となる型紙があり、それをお客さんにカスタマイズする、というやり方はしません。

前身頃の輪郭のチャコが入り終わると、中側のポケット位置やダーツなどのチャコが入ります。

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チャコが入り終わると、ついに生地に鋏が入ります。チャコの線に対してある程度の余裕を持って裁断します。切れ味のよい鋏で、刃に触れると生地が勝手に二つに分かれていくようです。右と左の前身頃を、生地を重ねていっぺんに裁断する仕立て屋さんもいますが、N氏は一枚ずつ丁寧に裁断していきます。

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片側の見頃の裁断が終わると、反対側の身頃になる生地に、軽くアイロンをあてていきます。最初に裁断した身頃も、勿論、裁断前にアイロンがあたっています。

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写真の端の方の生地を見ると、ハリスツイードにしては、とてもしなやかに柔らかくなっていることがおわかりになると思います。
アイロンをあて終わると、今度は裁断し終わった身頃と、これから裁断する身頃の柄を入念に合わせていきます。

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柄合わせのチェックを済ませると、反対側の身頃の裁断です。どんなに最新式の工場のオートメーションも敵わないくらいの、スムーズで迅速な行程です。それでいて、とても緻密なのは、このレベルまで来てはじめて職人技といえるのでしょうか(笑)。

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前身頃の裁断が終わると、すでに裁断が終わっている背中側の生地も含めて、もう一度柄合わせのチェックを行います。

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確認に、N氏自ら納得がいくと、生地を優しくまとめて、身頃の裁断完了です。

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私の服は、全てのパーツの全ての工程をN氏が一人で行います。そのため、私とN氏との間では服の納期を設けずに、どんな細かいことでもお互いに時間をかけて話し合い、作業も無理をして進めないことにしています。この、他の方から見れば、現代ではナンセンスとも思えるかもしれない労力と時間が、私にとってはかけがえのない、優しく上質な服を醸成してくれるのです。
裁断が終われば、次は仮縫い。今から楽しみです。
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