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カシミア・カシミア -2-。

N氏より、件のカシミアスーツの最初の仮縫いの準備が整った旨のお知らせを頂き、早速行って参りました。
私を待っていた仮縫いは、ハンガーにかかり、カシミア特有のぬめらかな光沢を放っておりました。
N氏の手を借りながらトラウザースから身に着けていきます。まだ、付属品が一切付いていないので、要所要所をN氏がピンで留めていきます。

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トラウザースとベストを着用した写真↑です。仮縫いに足を入れて、最初に感じたのは、生地の柔らかな見た目とは違った、しっかりと詰んだ質感です。この生地だと膝が出るのを気にしなくてよさそうな、そんな強靭さが有るのです。人が着用しての動作に対する耐久性は、細番手のウーステッドより強いと思います。
照明のある室内で見た生地の感じは、この写真と下の写真が近いと思います。光量によって濃紺無地に見えることもありますし、時折表情を見せるヘリンボーンが、シャドゥストライプの様で味わい深いです。

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上着を着用しました↑。袖を通してまず感じるのは、しなやかさと軽さです。身体に軽やかにまとわりつくという感じで、サイクル・ウェアからタイトさを除いた感覚、というのが近い表現だと思います。
あらためて思ったのは、フランネルなどの重量のある生地の服との比較は無意味だということです。仕立て上がる服がスーツという形に分類されるというだけで、同じ土俵の上にいないものなのです。
つまり、このカシミアがどんなに素晴らしく仕立て上がって、快適に着て歩いていても、やはり、フランネルやヘビー・ウーステッドは着たくなるでしょうし、逆に、どんなにフランネルを愛していても、このカシミアの服は着たくなるでしょう。

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上着を着用したアップです↑。いつもながら、N氏のカットは素晴らしいと思います。大好きです。相性というものがあるとは思いますが、特にダブルブレステッドのカットは、私にとっては今現在、彼のものが最高です。

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背中側からの写真↑です。ツイードの項でも書かせて頂きましたが、肩甲骨周辺に山があって、ウエストが細い私の背中のフィッティングは難しいのですが、N氏はいつも、生地によって背中をどう表現するかを楽しみになさって(笑)いるようです。さて、今回はどんな背中に仕上がるのでしょうか?

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斜めから見た背中のアップの写真↑です。背中から腰椎に向かって流れる、このラインが美しいと思います。流麗と端整が同居している、しかし、男っぽい表現をしてくれるのが、N氏の背中の仕立ての特長だと思います。身体のラインを生かすカットやシェイプだと、スーツはややもすると女性的なラインになりがちですが、しかし、N氏の服は「男らしい(笑)」のです!

次回の中縫いに向けて、仮縫いをしながら二人でアレコレと雑談を交えながら、夢中になって話し込んでしまい、数時間がアッという間でした。
先の楽しみが、アレコレと一気に増えた仮縫いでしたが、仕立て上がりの報告をさせて頂くのは、さて、何時のことになるのでしょうか(笑)?
まぁ、いつも通りにのんびりと、焦らずゆっくり、でも、楽しみは深く濃く、アンダンテ・アンダンテ・・・で参ります。
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長年の懸案に挑む。 -1-

私にとって、装いの上で長年の懸案と言えば、それはドレス・シャツでした。
世界中どこに行っても、また、どんな専門の老舗で誂えても、シャツはスーツやジャケットを着用する上での「添え物」的な位置を脱しませんでした。そして、それはイメージだけでなく、上着の出来がどんなに素晴らしくとも、シャツが着感に制限を与えているように思えて仕方がありませんでした。
それらの理由を模索した中の幾つかを書かせて頂けば、まず欧州のシャツ屋さんは、伝統的なノウハウとレベルの高い顧客を持っていますが、既にその黄金時代を過ぎており、ノウハウや技術を持っていても、「なぜ、そうするのか?」という理由が忘れ去られてしまっています。問えば一番よく聞かされるセリフが、「うちは昔からそうだから」です(笑)。また、日本のシャツ屋さんは、細かい仕事は丁寧であっても、顧客の身体に合わせるという点では、所謂スーツの仕立てでいうところの、パターン・オーダーやイージー・オーダーの域を出ていません。
結局、ドレス・シャツの誂えというものは、最大公約数的に割り切るしかないのではないか? 昨今、私はそう思い始めていました。
そんな折に、独自の理論でシャツを誂えるY氏との出会いがあったのです。
Y氏は、顧客の身体と上着に、完璧にカスタマイズされたシャツを誂えることを目指し、そのために人体工学を学び、スーツの仕立て屋さんに弟子入りまでし、また、スーツに比べてアイロンでのくせ取りに限界があるシャツは、むしろ和服の仕立て技術の応用が有効と思い立たれて、その吸収にも余念がありません。
そんなY氏に、私のこれまでのドレス・シャツ感をお話しすると、全く同感とのご意見を頂いて、いつの間にか、二人でその意識を打ち破るシャツを造りあげましょう、というお話になったのでした。

Y氏より、最初の仮縫いの準備が整ったとのお知らせを頂き、アトリエへお邪魔しました。最初の仮縫いは、シーチングによって行います。シーチングとは、生成り木綿の薄手の生地で、本番用の生地をカットする前に型紙のチェックのために代用します。
Y氏は、顧客一人一人に、まるでスーツのそれのような独自の型紙をおこされます。そしてやはり(笑)、採寸から仕上げまでをすべて一人でこなされます。

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背中側の写真です。代用生地の仮縫いのため、本縫いされていないにも拘らず、おかしな着皺が全くと言ってよいほど無いのがお判りになると思います。左腕の肘の辺りがツレているのは、袖丈の長さを採るためにやっています。

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前側の写真です。やはり、不自然な着皺が無いことが判ります。私は、背中の肩甲骨付近の筋肉が厚く盛り上がっており、やや猫背気味で、胸囲と胴囲の落差が大きく、背中にしろ、前にしろ、こんな風に自然に生地が流れるのは、なかなか稀有なことなのです。

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トラウザースを穿き、タイを締めてみました。タイを締めたノットの付近にも、タイを挟んだ両前身頃にも、全くといってよいほど、ツレや皺が無いのがお判り頂けると思います。こうして他のアイテムを着用してみると、改めて実感するのは、シーチングの仮組みにも関わらず感じる、何とも言えない着心地の良さです。肩と首、そして腕に到る着感が、これまで私が着てきたシャツとは明らかに違います。良い悪いではなく、次元が違うので比較が出来ないというのが正直なところです。

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シャツ単体で着用している時よりも、トラウザースを穿き、ベストを着用し、上着を着こむと、より鮮烈にシャツとしてのモノの違いが判ります。スーツの着感が、これまではシャツによってかなりトーンダウンされていたことがハッキリと自覚できます。
スーツとドレスシャツの関係は、良質の靴とホーズの関係に似ているのではないでしょうか? どんなに素晴らしく誂えられた靴でも、きちんとフィットしたホーズを履かなければ、その靴本来の着感は得られないでしょう。良い靴を大切に、上手に履く方は、必ず良質のホーズをたくさん持っていらっしゃるものです。
Y氏との出会いによって、そんなシャツを着ることが出来る幸運を、私はたった今、実感しております。
本番の生地を使った中縫いが、今から楽しみです。どんな生地かは、次回の折に・・・(笑)。

練りものが好きです。

練りもの・・・、釦のことではありません。
釦は、水牛、鼈甲、蝶貝、椰子の実などなど、天然ものが好きです。

好きな練りものは、食べ物のことです。
和洋に限らず、これが好きなのです。

今日頂いたのは、蝦夷鹿のテリーヌ。
予約のなかなか取れないレストランとして著名な(笑) Oさんが本日店頭販売を始めたものです。ひょんなことから、我が家にやって参りました。
鹿などのジビエは、本来は冬の食べ物なのですが、北海道で増え過ぎて農産物被害を出してしまっている野生の蝦夷鹿対策の一環として、オーナーシェフのOさんが北海道の農家さんや猟師さん達と協力してスタートした、夏鹿メニューの一品ということなのですが、どうしてどうして、冬のものに劣らぬ風味です。

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アクセントに入っているレーズンが、飽きの来ない味わいを出していますし、鹿本来のあの凝縮感は堪能できるという、冬が待ちきれない私のようなジビエ好きには格好の料理です。
今晩は、フランス気分に浸ろうと、ワインもローヌの濃いものを、パンはパン・ド・カンパーニュをはじめ、ライ麦を多く使ったものを数種類、これに合わせました。
おかげさまで、自宅で連れ合いと味わう口福の夜となりました。

しかし、一点だけ不満が! 食べ物の写真を撮るのはとても難しいものですね(笑)!
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