fc2ブログ

個性と感性、嗚呼勘違い。

私には、常々疑問に思っていることがあります、と申しますか、間違っているのではないかと思うことがあるのです。
それは、自己の感性を磨くことが、個性を発揮することに繋がり、結果として、その人なりのスタイルの完成に至る、という図式が、です。
私は、個性というものは、物理的で肉体的で個人的なもの。つまり、具体的で現実的な、その人だけのものだと思っています。それに対して、感性というものは、精神的で抽象的で社会的なもの、或いは、多くの人との共有概念だと思っています。つまり、個性というものは、思考でもなく、感情でもなく、具体的な行動パターンだと考えているということです。
着る事に関しても、それは全く同じことだと思っています。
Aさんは紺が好き、Bさんはグレイが好き、というのは、一見感性の世界のお話で、精神的なもののように見えますが、だからAさんが紺の服を着る、Bさんがグレイの服を着る、というのは、きわめて具体的かつ現実的な行動で、他人はそれらの行動によって、AさんやBさんの個性というものを認識するからです。

win010.jpg
彼のこういった服装もまた、現実的な試行錯誤と選択の結果です。

感性というものは、人と人との共通概念であって、決して個人的なものではありません。
人の成功を喜ぶ、羨む、また、人の不幸や死を悲しんだり、悼んだりする、それが感性です。それは、成功というものが形はどうあれ、喜ばしい、または羨むべきもの、不幸や死は、悲しい、そして悼むべきものという共通概念があってはじめて成り立つものなのです。
装いの上手な人を、あの人は素敵だ、と認識する感性もまた、そうしたものです。「素敵」という共通概念があるから、そう思うのです。
反対する、感性=個性派(笑)の方達に、具体的な反証を挙げると、感性が個々千差万別で、イコール個性ということはこういうことです。スーツを完璧に着こなしている人を素敵と思う人がいて、また、同じレベルで、髪も洗わず異臭を放ち、そのうえ糞尿まみれの人を素敵と思う人がいるということです。肉親の死を哀しいと思うのと同じレベルで、喜ばしいと思う(対立したり、特定の思惑が有ってではありませんよ・笑)人がいるということです。
感性を、個人固有のものと考えるのはそういうことであって、イコール個性ということになれば、社会というものが機能しなくなってしまうのです。

ですから、経験値なるものがモノを言うことというのは、全て、肉体的、物理的事象なのです。着こなしとて例外ではありません。
経験値がモノを言うということは、反復練習や試行錯誤によって方法が選択されていくということで、一見、感覚的、精神的な感情作用に見えますが、実に具体的な行動の積み重ねなのです。
その人なりのスタイルというのは、こうした動作の繰り返しによって確立するもので、古来日本では、それを「型」と言いました。茶道でも、能でも、完成の域に達すると型がイコール自然とされるのは、このことを示しているのです。

ch010.jpg
反復練習の積み重ねの、明確な成果の事例ではないでしょうか(笑)

私が何を書きたいのかと言えば、安易に人の服装の真似をして、しかも上手くいかない人というのは、上記のような事の理解が欠けているのだと思う、ということです。
そして、そういう方の多くは、その原因を感性の違いや優劣という誤解に転嫁してしまうのです。
考えても見て下さい。まず顔、そして体格をはじめ、自分と全く同じという人は、世に一人として存在しないのです。ということは、自分が素敵だと思う人のやり方を(それは服の色や柄などだけでなく、考え方や選択方法なども含めてですが)そのまま単純に真似てもダメに決まっています。
世に、多くの人に素敵だと言われる人は、多くの試行錯誤と反復練習を繰り返してきているからこそ、そうなっているのです。
チェロに一度触れたというだけで、オーケストラの奏者のように弾けるようになる訳ではないのです。昨日、画材屋さんで初めて絵具と筆を買ってきた人間が、人間国宝のような絵が描ける訳ではないのです。
こう具体的に書けば、解からないという方は殆どいらっしゃらないでしょう。しかし、ご自分の服装に関することは如何でしょうか(笑)。
案ずるより産むが易し。習うより慣れろ。自分だけの唯一無二の感性を発揮した挙句、葬儀で一人大笑いするおかしな人になってしまう前に、まず、自分で試行錯誤し、反復練習することをお勧めしたいと思います。

そして、「あなただけの感性により磨きをかけ、自分だけのスタイルを確立しましょう」などという、怪しげなことを言う人達の話は、眉に唾して聞いて頂きたいものです。
スポンサーサイト



検索フォーム
リンク
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード