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アイドルも、カリスマも。

一昔前は、自分が、その人物の真似をするくらい贔屓にする存在を、アイドルと言いました。現在では、カリスマなんちゃらという言い方もあれば、畏れ多くも、「誰それは神!」と神格化されたりも致します。
一般的に、服を誂える日本の男性諸氏には、この傾向が著しく強いということが言えると思います。教養のある方が多いので、アイドルのカリスマのと表だって騒ぎ立てたりはしませんが、行動はその分更にラジカルです。
自分が入れ込む人物と同じ仕立て屋さんに服を依頼するために、わざわざ海を渡って行ったり、その服のディテールを、ミリ単位で仕立て屋さんに再現させようとしたりします。
彼等が憧れる人物は皆、私も確かに素敵だと思います。しかし、こうした行為に熱心な方達の多くは、体型や顔立ちが、憧れた人物とはかけ離れている場合が殆どです。どうせなら、なぜ、自分に似た体型、顔立ちの人物を選ばないのかが、私には不思議でなりません。また、彼等は、肉体を造り上げようという、かつての三島由紀夫のような意欲も希薄で、ひたすら服のディテールでそれをカバーすることを希み、仕立て屋さんは能力という範疇を超えた魔法使いであることを要求されます。身長が170cmもない痩せぎすの人に、190cmで胸囲が1m以上もある人と同じディテールを体格比率で修正した服を作って、同じようになれる訳がありません(笑)。
私は仕立て屋さんで、そうした顧客の方と、お互いの贔屓の人物紹介みたいなことが一種の社交になるのが好きではありません。勿論、私にも好もしく思う公人や芸能人はいます。曰く、公人では、先だっての記事にも書かせて頂いた、ジョージ六世、カミラさんとご結婚なさる前のチャールズ王太子、プリンス時代のウインザー公。芸能人では、ゲイリー・クーパー、ジャック・ブキャナン、フレッド・アステア。などなど。

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それは、まぁ、誰が見ても素敵ですが・・・(笑)

しかし私は、彼等の真似をしたこともありませんし、彼らになりたいとも思いません。自分の在り方というものの完成度を上げるための参考資料、といった書き方が適切かもしれません。ちょうど、手紙でキケロに関した論争をしたポリツィアーノのように。曰く、「あなたは、キケロに関して学んだ私が、全くキケロと似ていないではないかと言う。しかし、まずもって私はキケロではないのだ。そして、キケロを知ることによって私は私自身をより深く知ることが出来たのだ。」これに尽きます。
私は、自分の装いに、アイドルもカリスマもいません。ジョージ六世やクーパーになりたいとも思わないし、なる必要もありません。彼等のように私が素敵になりたければ、私は今以上に私らしく、私そのものにならなければならないと思っています。
自分なりに、自分らしく。どんなメディアでも、日に一回はお目にかかるような言葉ですが、それだけ日本人には苦手とされていることなのでしょう。日本人は、何か実質的な利害が関わり、一旦心を割り切れば現実的なのですが、そうでないと意外と夢想家というか子供のようで、ことに男性は、服装に関してこの在り様が顕著です。解かり易く書かせて頂くと、『好き』と『得手』の区別がついていないのです。「好き」だから似合うとは限らない、この単純な理屈が理解できていないのです。
そして、昨今の人達は、人間のあらゆる義務の中で、最も大切で最も高尚なものから、意識的なのか無意識なのかは解りかねますが、目を反らしているように思えます。自分自身をより良く伸ばすという義務を。
自分と向き合うことを恐れずに、まずは姿見で裸の自分をじっくりと観察するところから始めて頂きたいものです。『好きこそものの上手なれ』とするために・・・。
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