fc2ブログ

カシミア・カシミア -3-。

私は、カシミアが好きです。
そして、カシミアとシルクは繊維の王だと思っています。それは、光沢や質感について常に、「カシミアのような・・・」とか、「シルクのような・・・」という例えがなされることが証明していると思います。
良質のカシミアは、コートでも、ニットでも、ホーズでも素晴らしいものですが、個人的に最も向いているのはスーツだと思っています。冬暖かくて、夏涼しく、同じ織り方、目付で、一年を通して着られる期間が最も長いのではないでしょうか。もっとも、そうしたスーツを仕立てるには、その使用に耐えうる優れた原毛・紡績・織りの生地が必要で、今現在、なかなか手に入れられるものではないことも確かですが・・・。
私自身、約三十年仕立服をアレコレして来ておりますが、やはり、カシミアは最も好きな生地の一つです。

mm08
N氏に仕立てて頂いたカシミアのスーツ。トライングオン1

しかし、最近では、カシミアは不当に低く評価されている気がします。粗悪な低級品の氾濫や、所謂テレビジョンセレブと言われる品の無い人達が、お金にあかせて身に付けるもの、といったイメージが評価を低くしているのは、或る面で仕方の無いことと思いますが、一部の服飾業界の方達や服装に拘る方達が、カシミアのコートやジャケットを異端と冷笑する傾向には同意しかねます。
確かに、ガーズコートやピーコート、ポロコートなどは、元々カシミア地ではありませんでしたし、シングルブレステッドにしろダブルブレステッドにしろ、ブレザーもそうでした。そうした元来の素材で仕立てられたものに、特有の機能美があり、着込むことによって独特の着感が出る、などの様々な美点があるのは理解しますし、私もそれを愛しますが、あまりにその面を強調し過ぎるのは如何なものでしょうか?
亜熱帯に近い気候になった日本で、今よりずっと寒かった英国の冬素材を使うことが機能的でしょうか? 軍人が雨の中を歩き回り、作業をするという状況に耐えうる生地が、現在の日本のエグゼクティブに必要でしょうか?
服はまず快適であるべきであり、「着用する人間の状況に合わせて」機能的であるべきだと思います。

mm09
N氏に仕立てて頂いたカシミアのスーツ。トライングオン2
色と光沢と質感のバランスが素晴らしい生地だと思います。


好きで着る事や、原理主義的なものを否定はしませんが、そうした方達は、自分の路線と違うものを路線上と同じレベルで試した上でのお話なのでしょうか?
釣りに例えれば、「鮎に始まり鮎に終わる」とか「鮒に始まり鮒に終わる」と申しますが、それは、鮎や鮒と同じレベルで、他の魚や釣法も追求し、最終的にやはり鮎や鮒がよい、となることです。友竿しか握ったことが無いのに、「鮎に始まり鮎に終わる」を気取って、鮎だ、鮎だと騒いでいるのは、個人的な面では微笑ましいですが、一人静かにやって頂きたいものです。その知識や経験値は、自分以外の人間に何かを言えるレベルのものではないのですから。

mm10
N氏に仕立てて頂いたカシミアのスーツ。トライングオン3
N氏はいつも、背中を男らしい美しさに仕立ててくれます。


カシミアの光沢は独特で、ヌメ感とか、濡れた様なと例えられますが、特有の華やかさがあると思います。
私は、ダークスーツでも比較的格式のある、ブラックタイではないけれども、そこそこフォーマル感のある集いなどで着用するのが好きなのです。その光沢の華やかさが、そうした場面によく合うと思うのです。しかし、この光沢は、品質が落ちるほど品の無いものになっていきますので、あくまでも上質なものでのお話で、その点、注意が必要です。
質感については、個人の好みが優先されると思いますが、元々軽い素材なので、スーツに仕立てる生地としては、あまり軽いものは向かないと思います。繊維長が長いものを使っていて、握ると生地に腰が感じられて、打ち込みが多く、目付もある程度あるものが良いと思います。具体的なウエイトで、320~330gくらいでしょうか。許されれば、生地の端に親指か人差し指を押し付けて、グリグリとおやりになってみて下さい(笑)。それで、毛羽だったり、へこみができるような生地は、スーツは無理だと思われた方が無難です。
良いものに出会う機会を得ることが困難で、紛い物レベルの生地も多いカシミアですが、コレは!というものに出会った折には、清水の舞台から飛び降りることをお勧めしたいですね。俗な表現で恐縮ですが、この、泥パックの中に全身を包んだような、甘やかな快感を、お好きな方には是非追求して頂きたいと思います。
スポンサーサイト



検索フォーム
リンク
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード